心理
チャチャチャ〜〜ン!チャンチャンチャンチャ〜〜〜〜〜〜〜♪
「誰だー!暴れん坊将軍を流しているのは?」
教壇に立っていたハゲ先生は大人しく授業を受けている生徒達を睨みつける。
その睨みの効果がわからないが、一人の男子生徒が手を上げて立ち上がった。
「先生、先日受けた企業からの合否結果かもしれないので出てもいいですか?」
男子生徒は真面目な顔で答える。
その間も携帯は鳴り続け、ほかの生徒は迷惑そうな顔になっていく。
「そういうことなら早く出ろ。相手に失礼の無いようにな。」
ハゲ先生は男子生徒をベランダへ送り出し、授業を再開した。
「んじゃ、続けるぞー。ここの数字は、ここに代入されて・・・」
背後の教室からはすかに聞こえる授業を意識的に無視し、携帯のボタンを押す。
「もそもそ?」
『そのギャグはいまいちね。』
携帯から聞こえる声はとても綺麗で、まるで歌を奏でているようだった。
「あ、やっぱり?」
『わかってるなら、やらない方がいいわよ。』
授業中に一生懸命考えていたギャグは受けなかった。
「今度からはカ○オ君のモノマネでいくことにするよ。」
『期待してるわ。』
男子生徒はベランダの手すりに体を預けて楽な姿勢になる。
「んで、今日は何のようですか?」
『は?昨日あんたがこの時間に電話をかけてこいっていうからかけてあげたのよ。そんなことも忘れたの?』
「や、やだなぁ。覚えてるに決まってるじゃない。」(あっれ〜?んな約束したっけ??)
頭の上にクエスチョンマークをのせながら誤魔化す。
『まあいいわ。そんなことより、あんたにいい知らせがあるわ。』
「ほうほう。」
話が変わってちょっとホッとする。
『あんた、私の会社に合格したみたいよ。』
「えっ?マジで!?」
男子生徒は文字通り飛び上がった。
『こんなことで嘘ついてどうするのよ。それより、どうして私の会社にしたの?あなたなら、もっと格が上の会社に・・・』
「それ以上いわんでください。」
男子生徒は渋い声で相手をさえぎる。
「好きな人とずっと一緒にいたいと思うのは当然の心理、とだけ答えておきましょう。」
『まあまあ、年下ちゃんがませた事言うのねぇ。私は競争率高いわよ?』
挑発と男子生徒は受け取った。
「大丈夫ですよ。あなたは絶対僕のところに帰ってくる。昨日の夜だって、あんなに激しく・・・」
『どうして約束は覚えてなくて、そんなこと覚えてるのよ!』
相手が恥ずかしがっているのが、声でわかる。
「まぁまぁ。あ、そろそろ授業に戻りますね。ハゲが睨んできてますので。」
『そう。それじゃ、また夜にね。』
「ういっす。」
携帯の電源ボタンを押す。
「先生、内定もらえました〜。」
みょうに間延びした声が教室に響いた。